こんにちは、「しぜんfan」のPollyです。
今回の「世界のニュース翻訳」では、今最も世間の関心度の高いであろう「新型コロナウィルス」についての記事をセレクトしたいと思います。
中でも、今なお横浜に停泊している大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」について。
アメリカ本社のクルーズ会社「プリンセス・クルーズ」に所属している外航クルーズ客船。船籍はイギリス・ロンドンだが、生まれは長崎(三菱重工業長崎造船所)。
今回のクルーズは横浜発着で、当初の旅行期間は2020/1/20~2/4だった。(情報元:Wikipedia)
日本のテレビでも連日取り上げられていますが、世界の目はどう見ているのかも気になるところです。
そんな視点でBBC、ABC、The New York Timesなどのトップページを巡回し、特に気になるタイトルで出ていたBBCの記事を、今回のお題としたいと思います。
目次
今回の翻訳記事情報
今回の翻訳記事は、黄色の線で囲んだこちらです。
写っているクルーズ船は、明らかに「ダイヤモンド・プリンセス」ですよね。
タイトルにある「Petri dish」とは実験に使うペトリ皿、すなわちシャーレのことです。
【ニュースサイト】BBC NEWS
【記事URL】Coronavirus: Are cruise ships really ‘floating Petri dishes’?
【記事アップ日】12 February 2020
それでは早速、内容に入っていきましょう。
記事内容:クルーズ船は本当に“水上のシャーレ”なのか?
中国本土に次いで、コロナウィルスの最大のアウトブレイク(発生・集団感染)が起きている場所は、どこの国でもなく、一隻のクルーズ船――
下船した乗客一人の新型コロナウィルスへの感染が確認されたことによりダイヤモンド・プリンセスが封鎖され、一週間以上が経過しました。
(これまでのところ)3,700人の乗客のうち約500人の検査が行われ、174名が新型コロナウィルスに感染していることが分かりました。乗客たちの船上での隔離期間はあと一週間です。
(※2020年2月13日正午現在、新たに44名の感染が確認され、合わせて218名となりました。)
しかし、(同様のことが起きているのは)ダイヤモンド・プリンセス号だけではありません。
香港の別のクルーズ船では、3,600人の乗客が、ウィルスに感染している可能性により隔離されました。
彼らは、検査結果が陰性であると確認されてようやく下船が認められました。
また、1,450名を乗せた別のクルーズ船は、2月1日に香港を離れた後、感染者が乗っていないにも関わらず、日本や台湾、グアムやフィリピンの港から相次いで入港拒否されました。現在、ようやくカンボジアへの寄港が許されたところです。
クルーズ船は何年もの間、“水上のシャーレ” ――病原菌が行き交い、病気が広がるのにうってつけの場所―― に例えられてきました。
しかし、果たしてそれは本当のことなのでしょうか?
ウィルスはクルーズ船内ではより広がりやすいのか
クルーズ船では呼吸性および胃腸性疾病の感染リスクは上がる、とオーストラリア国立大学の感染症専門家であるSanjaya Senanayake教授は話します。
「(クルーズ船では)一般的に、世界中の様々な地域から乗り込んだ乗客や船員が、短期間に密接に関わり合います。彼らの免疫レベルは様々であり、それが感染の発生(拡大)を引き起こすのです。」
コロナウィルスは飛沫により感染すると考えられており、これは、ウィルス保有者との直接的な接触がなくとも起こり得るとのこと。
「例えば、誰かがテーブルに向かってくしゃみをしたとしましょう。そして、すぐに他の誰かがそのテーブルを触ったとしたら、それが感染に繋がる可能性があります。」とSenanayake博士。
「人々は直接会話をしているわけではないかもしれません。しかし、スイミングプールやスパ、ダイニングルームやホールといった共有スペースで過ごしているのです。」
一方で、クルーズに詳しいStewart Chiron氏は、「実際のクルーズ船内での状況は、認識されているものとは大きく異なっています。」と話します。
「例えばビュッフェの列に並んでいるとき、乗客同士の接触や何らかの交流が数多く起こると考えられがちです。」と、これまでに250回以上ものクルーズ船への乗船経験がある同氏。
「(しかし、)メジャーなクルーズラインではそんなことはありません。料理の種類ごとに持ち場が分かれているからです。もし卵が欲しければ卵セクションに行き、手袋をしたスタッフが対応してくれる。」
「何が言いたいかというと、人々は列に並ぶことはほとんどなく、全ての料理の前を全員が通り過ぎていくというわけではないということです。このことは、人々の接触・交流を最小限に抑えています。」
では、船員の間では?
乗客同士の接触が最小限であるとしても、乗務員間の接触はというと、また別の話です。
ダイヤモンド・プリンセスでは、少なくとも10名の乗務員が感染しています。New York Timesによると、1,000人以上のスタッフが“肘と肘を突き合わせながら乗務している”そうです。
「乗務員同士には、おそらくトイレなどの設備を共有し合うほどまでに、かなり密接な接触が起きていると考えられます。乗客は下船しても、スタッフはそのまま交代しないこと多いでしょう。よって、船員間で(感染の)伝播が続いていれば、次に乗り込む乗客たちにもそれが続いていくことになります。」とSenanayake博士。
リスクはどう抑えられるのか
Chiron氏によると、クルーズ船には非常に厳しい衛生基準、検査基準があるそうです。
「クルーズ船では、常に乗客の状態をみることが徹底されています。もし病気にかかっているように見える乗客がいれば、健康検査の対象となります。」
おそらく、クルーズ船でもっとも注意される病気はノロウィルスでしょう。ウィルスに汚染された食品や水を口にしたり、汚染された物に触ることにより感染する、嘔吐性の感染症です。
「ノロウィルスの発生に備え、クルーズ船にはいくつもの対応策が用意されているものです。」とChiron氏。
「(もし発生すれば)広範囲に渡っての拭き掃除、磨き掃除が行われ、どこもかしこも何度も清掃されます。ビュッフェでは、かご入りのパンなどといったメニューはなくなるでしょう。これに関しては、乗務員たちは特別に訓練を受けているのです。」
同氏は、こういった対応策はコロナウィルスの発生以来、さらに厳しくなっていると言います。
「乗務員たちは、前にも増して乗客の様子に注意を払っています。クルーズ船内がどれだけ清潔に保たれ、管理されているかを実際に見てください。いかに彼らが徹底しているかが分かると思います。」
Senanayake博士によると、船上でどのように病気の伝染を防ぎ、管理するかについては、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)から「船舶衛生プログラム」というものも発表されているそうです。
「今ではクルーズ船には何ヶ所もの消毒所があるはずですし、乗客でも乗務員でも、病気の人は乗船しないようにアドバイスしています。」
「確かにクルーズ船にはリスクはありますが、実生活の全てはリスクと隣り合わせです。(どこであろうと)基本的な予防策を実践することが大切です。」
ダイヤモンド・プリンセスについて、Senanayake博士は、乗客を各自船室に待機させることは「良い隔離策」であると言います。(※乗客は、一定の間は屋外デッキへ出ることが可能)
しかしながら、「船側は、なぜこのような状況になっているのかを確実に乗客に理解してもらい、逆に彼らの心配事などもきちんと理解する必要があります。」と博士は続けます。
「楽しい船旅から一変、怖い思いをしながら部屋に隔離されているのです。一連の対応は、常に人道的で思いやりを持ったものであるべきです。」
クルーズ業界への打撃は?
クルーズ業界は、間違いなく“経済的打撃”を受けると予想されますが、Chiron氏は、今回のことは人々をクルーズから遠ざけることにはならないだろうと話します。
「クルーズ業界が受けるダメージは、中国や東南アジア周辺の航路のものに限定されるでしょう。クルーズライン自身が、それらのルートを取り止めていますし。」
「例えばノルウェージャン・クルーズは、全てのアジア航路をキャンセルしています。これから彼らは、何億ドルもの返金をせねばなりませんね。」
「しかし、ヨーロッパやアラスカ、アメリカといった他地域を見ると、人々は変わらず旅行しています。ロイヤル・カリビアンは、彼らが受けた質問の中でコロナウィルスに関するものはたった1.5%だったと明かしています。」
「人々は確かに心配しています。しかし、変わらず旅行しています。アジア以外の世界中では船は満員で、これからも満員になることに変わりはないでしょう。」
以上
感想
長い記事となりましたが、メインとなったのは2人の専門家へのインタビューでしたね。
一人は、オーストラリア国立大学の感染症専門家・Sanjaya Senanayake博士で、もう一人は、これまでに250回以上もクルーズの旅を経験してきたというStewart Chiron氏。
専門家の言うことは、それはそれでもちろん参考になるのですが、こんなときに一番強いのは、以外にも経験豊富な一般人なのかもしれません。
(Chiron氏がどの国の方で、どんなご職業なのかは不明ですが。口ぶりからは、おそらくアメリカ人。)
特に、中盤で船内の衛生管理について語るChiron氏の言葉からは、彼のクルーズへの愛情を感じました。
とにかく、この記事で分かったことを私なりに整理してみると…
- Senanayake博士は「クルーズ船はシャーレになり得る」という見解
- Chiron氏は「みんなが思うほどのシャーレではない」と反論
- Senanayake博士は、ダイヤモンド・プリンセスの“個室隔離策”は正しいと思っているが、乗客のケアという面ではもしかすると思うところがあるのかもしれない
- 海外で、乗客(および乗員)へのケアに関する同船の対応がどう報道されているのかは、この記事からは不明
- Chiron氏は、今回の新型コロナでクルーズ自体の人気が落ちることはないと考えているが、アジア方面の航路は確実にダメージを受けるであろう
大まかには以上のような内容だったかなと思います。
個人的には、「クルーズ船での旅」という一大マーケットが世界には存在しており、その中には「プリンセス・クルーズ」の他にも「ノルウェージャン・クルーズライン」や「ロイヤル・カリビアン」といった大手のクルーズ会社がある、ということを知り、ちょっと世界が広がった気がします。
おわりに
以上、2020年2月12日のイギリスBBCによる新型コロナウィルス関連記事「クルーズ船は本当に“水上に浮かぶシャーレ”なのか?」の翻訳をお送りいたしました。
2020年2月13日夕方時点のNHKニュースでは、中国での死者は1367人、患者の数は5万9,804人になったそうです。
うなぎ上りに上がる数字や、テレビで見る武漢の病院・収容施設の様子などに、現実とは思えないような恐ろしさを覚えるとともに、日本へも次々と波及している物理的・経済的な影響についても心配です。
しかし、アジア以外の世界では、(差別問題は別としても、)意外と事態を冷静に見ているのかもしれないなと思った今回のニュース記事でした。
最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。
ではまた☺ Polly