こんにちは! 自然観光と風景写真撮影が趣味の福岡市民、「しぜんfan」のPollyです。
いきなりですが、今回ご紹介する自然観光は、涼しい顔で悠々と楽しむような小綺麗なものではありません。
荒い息と汗にまみれた、体力勝負の観光。
私のような普通の体力の人には「苦行」と言って差し支えないような体験型名所、熊本県美里町の“日本一の石段”こと「釈迦院御坂遊歩道」の体験レポートをお送りしたいと思います。
この石段、段数は3,333段です。2位の「羽黒山」(出羽三山神社・山形県)の2,446段に大きく差を付けて日本一。
「せっかく日本一だっていうなら、どんなもんか見てみよう」と、その段数の意味もよく理解しないまま、安易な気持ちで手を出してしまいました。
まさに、「手を出してしまった」という表現がぴったり(笑)
その結果どうだったか、登った先には何があったのか…せっかくなので、その体験をまとめて記事にしてみようと思います!
頂上までの道のりを詳しく見てみたい方、よろしければぜひお付き合いくださいませ。
※記事内の写真・情報は2019年9月15日時点のものです。
目次
私の挑戦データ
訪れたのは、夏も終わりの2019年9月15日。盛夏が戻ってきたかのように蒸し暑く晴れ渡った日曜日でした。
参考までに、私の訪問データはこちら。
- 訪問日時:2019年9月15日(日)午前9時過ぎ
- 天気:快晴
- 熊本地方の気温:最高34℃/最低24℃
- 石段頂上までの上り時間:3時間10分
- 石段頂上からの下り時間:1時間30分
- 合計滞在時間:約6時間
当日会った方々やネット上の情報では、上りの所要時間の平均は「2時間前後」のようですが、私はなんと堂々の「3時間10分」。
しかも、最上段に到達しただけでは終わらず、そこからさらに1km先にある「釈迦院」にも足を延ばしましたので、もろもろ全て含めたトータルの滞在時間はおよそ6時間でした。
上り始める前は、ここまで一日がかりのアクティビティになるとは思っていませんでしたよ…。
こんな私の体験談からも、所要時間の予想が付きづらい初挑戦の場合は特に、「今日は一日予定もないし、天気もいいし!」という日に行くのがいいのではないかと思います。
石段入口付近の様子
さて、こちらが石段の登り口の全体像です。車道沿いにあります。
階段から道を挟んだ正面には公衆電話やテーブル・椅子が設置されたスペースがありますので、復路でお連れさんとバラけた場合は、最終的な待ち合わせ場所としても使えそうですね。「あー、降りてきた降りてきた!」とか言って。
石段の入り口横には「阿蘇大明神」と書かれた割と新しめの鳥居があり、階段を上がって様子を見てみると、小さな神社の境内は石段を上る人々の荷物置き場と化していました(笑)
奥には人知れず東屋も配置されており(上の写真右)、ちょっと休憩するのによさそうです。
横を流れていた川が、風情があってとてもきれいでした。
美里町には「いや川水源」や「七次郎水源」といった水の名所もあるようですし、水の国・熊本を流れている川というだけでもう勝手に清流認定です。
ちなみにこの川は、この石段周辺の山々に端を発する「釈迦院川」という川に流れ込んでおり、その釈迦院川はのちに「都留川」「緑川」と合流。熊本平野南部へと抜け、最後には宇土から有明海に流れ出しています。
閑話休題。
石段の方に戻って、入口脇に立ち並んだ案内板や石碑を見てみましょう。
写真左のオシャレなデザインの石板は、麓から頂上までの道のりを示した案内板です。登る前には見事に内容が頭に入って来ません(笑)
右の石碑は「御坂遊歩道由縁」というタイトルで、この石段にまつわる大事なことが書いてあります。
この御坂遊歩道は第50代桓武天皇の病気平癒の功績により、弉善大師が延歴18年(西暦799年)に開山した金海山大恩教寺釈迦院の表参道である。
御坂遊歩道整備事業は、この由緒ある道「御坂」を石段により復元したものであり、昭和54年1月に着工し、昭和63年3月に延長1,900メートル、3,333段の石段が完成したものである。
この石段に、我が中央町の個性ある歴史と伝統文化を生かした観光の振興による町づくりの中心施設として、地域経済の浮揚発展を図るとともに、国内産の名石はもとより世界各国の石材を使用しており、国際的な観光施設となるよう配慮したものである。
この石段が、観光施設としては勿論のこと、青少年の健全育成を図る教育文化の場として、都市住民とのふれあいの場として、さらには国際交流の場として多くの人々に親しまれることを期待するものである。
平成2年3月吉日 中央町長 市川昭吉 識
美里町は、2004年(平成16年)に砥用町(ともちまち)と合併するまでは「中央町」だったそうですので、この石段が完成した1988年はまだ中央町だったんですね。
私がこうして入口付近をうろうろしている間、ダンベルを両手に持った(!)マッチョな男性二人組が軽快に階段を駆け上がって行きましたし、道中は家族連れも多く見かけましたし、町長さんの想いはしっかりと形になっているようです。
まさか石段登りを体力づくりやトレーニングの場としている人々がいようとは思いも寄りませんでしたが、とにかく私が想像していたよりも人の気配が多く、人気のある場所である様子。
さあ、それでは早速上ってみましょう! 準備体操もお忘れなく!(これ、意外と大事だと思います。)
頂上までの道のり
ここからは、【パート1】から【パート7】まで、登ってみてなんとなく区切りになってたかな、という段階ごとにご紹介していきたいと思います。
- パート1:200段目付近まで
- パート2:200~900段目手前の平地
- パート3:900~1000段目付近+休憩
- パート4:1000~1700段目付近+休憩
- パート5:1700~2300段目付近+森林浴
- パート6:2300~2500段目付近+休憩
- パート7:2500~最上段
あくまでも、最上段までに3時間10分かかったアラフォー女子の個人的なパート分けですが、なんとなくはペース配分の参考にしていただける、かもしれません。
なお、「+休憩」と書いているのは、東屋などの休憩所があってしっかり休憩できたタイミングのことです。
もちろんそれ以外にもちょこちょこベンチなどは配置されていますし、私は100段おきくらいのペースで立ち止まりつつ、座れるところには全て座りつつ(笑)、かなりマイペースに進みました。
おかげで後から来た人に追い越されるばかりでしたが、早く登るだけが全てではありませんからね!
【パート1】200段目付近まで
まずははじめの200段です。
案内石板によると、192段上ったところ周辺には「大威徳明王(牛の宮さん)」があるそうなんですよね。
私は当日それを知らずに素通りしてしまったのですが、後になって調べてみると、この「大威徳(だいいとく)明王」というのは一般的には「不動明王」をリーダーとする五大明王の一人で、六面六脾六足の仏像なんだとか。
顔が6つ、腕が6本、足も6本です。詳しいことはよく分かりませんが、黒い牛に乗っているそうで。
その正体はさておき、その192~200段目あたりには大きな東屋や公衆トイレがあり、区切りとしてはもってこいの広場となっています。まずはそちらを目指しましょう!
・・・と張り切って上り始めるわけですが、いきなりきついです(笑)
進んだ道のりを確認するべく振り返ってみると、けっこうな角度。
「これが3000段以上あるって…」と早くも(ようやく?)事の重大さに気付き始めます。が、まだまだ元気。はじめの100段を越え、よいしょよいしょと階段を上がるうちに、大きくて立派な門が登場します。
これがその、牛の宮さん(大威徳明王)のあるフロアですね。
門の内側に設置された温度計は「23℃」。この日、熊本市では最高34℃の真夏日でしたが、朝9時半だし山の中だし、かなり涼しめです。
同じく門の中、温度計付近にはくまモンが笑いかけてくる板が置いてあり、よく見るとその下には「釈迦院御坂遊歩道記帳簿」なるものがありました。
早速入山届のノリで書き込んでしまいましたが、行の右端には石段を登った感想を書く欄があったため、とりあえず名前は書きこんだままにしておいて、残りの項目は帰りに書き足すことに。
お宮さん界隈を通り過ぎ、200段目間近になると大きな東屋とトイレが見えてきます。第一休憩スポットです。
ここまでで、体のコンディションはどんな具合でしょう。
最初の200段なんてへっちゃら、と思いきや、ここまでで満足して帰る人もいるようで、実はこの「200段目付近」が一番の落伍ポイントなのかもしれません。
実際、「このまま上までは行けそうにないな」と思った時点で引き返すというのも大事ですよね。
しかし私が思ったのは、ここまでは自分のペースがまだ掴めておらず、3333段という長丁場へのイメージも掴めておらず、がむしゃらに頑張っていきなり燃え尽きてしまう可能性もあるのではないかということ。
始めが肝心!ということで、体力配分を探りつつ、余裕を持って序盤に臨むのが吉、ではないでしょうか。
男女で一緒に登る場合は、やはり男性陣のほうが早いですので、女性陣の具合を気遣ってあげるのを忘れないでくださいね!
性別に関わらず、体力に応じてバラけて行くのも現実的だと思います。
【パート2】900段目付近まで
200段~900段付近までは、変わり映えしない景色の中でひたすら階段が続きます。これを乗り越えるとしばし緩やかな坂道を歩くことができますので、とにかくそこまでは黙々と上ってみましょう。
階段の左端には100段ごとに石碑が立っており、それが進捗のいい目安になってくれます。右側通行ですので、人通りを見計らいつつ左車線(?)に入り、いちいち写真撮影。
そんなことをしているから最上段までに3時間もかかってしまったのかもしれませんが、そうでもしないと息が上がって本当にきつかったんです(泣)
しかもちょっと貧血持ちですので、100段上るにも必死。
ちなみに石段の高さは、私の指先から手首あたりまででした。おおよそ20cm弱。高すぎず低すぎず、一般的な建物の階段と変わらないくらいだと思います。
800段目を過ぎ、もうすぐ900段かというところで、天国のような平地が現れました。足休めにはかなりありがたいです!
レッドブル白龍走
ゆるやかな坂道の脇には何やら人名の彫られた石碑が並んでおり、各石碑には「Red Bull 白龍走」というロゴが付いています。
調べてみると、この「レッドブル白龍走」というのは毎年6月にこの石段で開催されているレースのことで、彫られているのは開催年ごとの男女別優勝者たちのようです。
名前の下に刻まれているタイムを見ると、26分とか35分とか。もう意味が分かりません。私、ここまでで既に30分…。
マイペースに行きましょう。再び階段を上り始めたところで、すぐに900段目に到達です。
【パート3】地獄の900~1000段!
記憶している中では、私にとってはこの900段~1000段あたりが一番きつかった気がします。悠長に彼岸花など撮っていますが、休憩半分、現実逃避半分です。
きれいでしたけど。
息切れに苦しみながらも一段一段力を振り絞って、ようやく1000段目に到達! 目の前にあった東屋に倒れ込みます。
息が落ち着いてから辺りを見回すと、この東屋、日当たりも良く小綺麗で眺めも最高。山の清々しい香りや空気も相まって、かなり癒されました。
これまでは標高が低い部分を歩いてきたせいか、階段の周囲も木々に覆われていて薄暗かったのですが、ここにきてパッと開けた感じです。ここが頂上だったらよかったのに、というほどの充実感。
が、正面には容赦なく続く石段。
まだまだかぁ~…、とは思いましたが、目標を順にクリアしていくというのも楽しいし、引き返そうとはこれっぽっちも思わないから不思議なものです。
しかし体力的には、間違いなくここが第一次限界突破ポイントだったと思います。
きれいなトカゲ
5分ほど休んで再出発!
石段を上り始めてすぐ、きれいな色のトカゲに遭遇しました。
かべちょろ(カナヘビ)のようですが、尻尾の色がエメラルドグリーン? コバルトブルー?
茶色のものなら子どもの頃によく見かけたものですが、こんな色のものは初めてです。この後も釈迦院までの道中で何匹か見かけましたので、この辺りにはよくいる種類のようですね。
たまにこういった、いつもの日常にはない発見があると嬉しいものです。
【パート4】1700段目付近まで
少し登って振り返ると、先ほどの東屋から見えた山がそのまま視界いっぱいに広がっていました。
こんな絶景の中でなら気持ちよく戦えそうだ、と気分も新たに歩みを進めていると…
あと十数段で1200段目に届こうかというところで、目前のこの階段の長さを見て怖気づき、再び休憩。同じように休憩をしていた女の子としばしお喋りをしました。
南阿蘇・高森での観光レポート「たかもり号で行く白川水源」の最後でも触れたのですが、熊本って本当に、人が良くて根が明るい人たちが多いです。
他人への垣根が低いというか、気心知れやすいというか、すぐ友達になれる感じ。
登山やハイキングのときのように、この石段でもみんな、すれ違う度に気持ち良く挨拶し合うのですが、挨拶だけでなく会話も始まってしまうのが熊本らしいところです。
再び上り始めたところで少し会話した40~50代くらいの女性は、「20年ほど前に一度登ったときは、翌日寝込みましたよ~(笑)」と話していました。でも今は登山がご趣味だということで、軽快にステップを上り、みるみるうちに見えなくなってしまいました。
日頃の体の使い方で、こうも変わるもんなんですねぇ。
とにかく必死だった1000段目までに比べ、たまには上を見上げて緑を楽しむ余裕も出てきたのがこのパート。
時刻は10時半過ぎ。太陽が昇ってきたからか標高が上がってきたからか、木漏れ日の差し入る様が大層きれいでした。
これが曇りや雨の日だと、階段はずっと薄暗いままなのかもしれませんので、景色も楽しみたい場合はやはり太陽が出ている日を選んで挑戦するのがいいと思います。
相変わらず100段ごとに休憩するというスローペースで進み、なんとか1600段にまで到達!
ここにきて段々と、自分のペースで上るコツのようなものが分かってきたようには感じますが、きついものはきつい。自分を励ますために心の中でブツブツ呟いていたのがこれです。
「歩かないと進まないけど、歩けば進む」。
もはや何のために辛い思いをして登っているのかと自問自答を始めるくらいに、精神世界にいっちゃう感じ。
修行です。
「感謝之碑」に感謝
ところで、石段沿いには数々の石碑や記念碑が建っているのですが、中でも印象に残ったのがこちらの石碑です。
石段完成25周年記念の折に、元中央町町長さんから吉田夫妻へ贈られた「感謝之碑」。
この吉田夫妻(親子かもしれませんが)は、石段建設にあたり、いくらかまとまった土地と樹木(檜や杉3,200本)を無償で提供した方々なんだそうです。
そのボランティア精神も素晴らしいですし、市川元町長の石段への変わらぬ愛情も感じられます。
他にも、他県から石段の寄贈があったりと、いろんな人々の協力に支えられてできた『日本一の石段』なんですね。200円ぽっちの駐車場代にがっかりしている場合ではありませんでした(笑)
1700段目付近でしっかり休憩!
出発から1時間半でようやく次のオアシス、1700段目付近に到着です。
1700段目付近には、休憩やお昼ごはんにぴったりな屋外ベンチエリア、東屋、バイオトイレがあります。
トイレはきれいに管理されていて、なんの不快感もなく利用することができましたよ。
ここに自販機があれば最高なのに! と一瞬思いましたが、こんな1700段も石段を昇らなければならない場所に、業者さんも来てはくれませんよね、そりゃ。
すっかり現代病にかかっている自分に気付く瞬間でした。
【パート5①】1900段目付近まで
あまり休みすぎてもきつくなるので、また上り出せるくらいに体力回復したら出発!
今まではひたすら階段が続きがちだった遊歩道も、1800段を越えるあたりから断続的に平地パートが出てきたりして、体も気分も楽になってきた気がします。
平地といっても緩やかな坂にはなっているのですが、階段に比べると楽ちん。絶好の森林浴タイムにもなります。
段数も半分を越え、なんとなく全体的な見通しもついてくるので、けっこうがんばれそうな気がしてくるのがこの【パート5】だと思います。個人的には一番楽しかった時間かも。
周囲の木々も大きくて立派で、見ごたえがあります。
クスノキや杉の木でしょうか。
そういえば、確かこのあたりで、麓で見かけたダンベルマッチョガイズが談笑をしながら下りてくるのにすれ違いました。
この時点で私が上り始めて2時間弱ですので、彼らはその間に階段を全て上り切り、1800段目まで下りてきたということ。しかもダンベルを持って。すごいですねー…。
「元気が出るテレビ」の石碑
まとまった長さの階段がでてくる度に「またきたぁ…!」と身構えるのですが、この階段前、右側に立っている石碑を何気なく見てみると、「天才たけしの元気が出るテレビ!!」の文字がありました。
この番組のことを、平成生まれは知っているのでしょうか。私でさえ、物心付くか付かないかという頃の番組ですが、今思うとなかなかいいタイトルですね。
石碑に彫られた日付によると、石段完成の3年前に撮影・放送されたようですので、完成している長さの範囲で石段登りチャレンジでもしたのかもしれません。
全国放送の、しかも超人気番組が来たということで、この石段の建設が全国的に注目されたということが窺えます。
【パート5②】2300段目付近まで
「元気が出るテレビ」を過ぎると程なく1900段目に到達します。
階段パートが出る度に小休止しつつ、少しづつ前進。残り段数のことを考えると気が遠くなってしまうので、2000、2100、2200、と無心に足を動かします。
そうするうちに、ついに2300段目もクリア。3分の2を越えることができました。
のこり3分の1のラストパートに向けて、そろそろこのあたりでまとまった休憩をしたい気分です。
【パート6】2300~2500段目でしっかり休憩!
この石段を設計した人は本当にすごいと思うのですが、人が休憩をしたくなるであろう間隔で、程よくベンチや東屋などが設置してあるんですよね。
中でも2300~2500段の間には、しっかり座って休憩できる場所が3ヶ所ほどあったと記憶しています。残り1000段に向けて体力を回復させるにはもってこいです。
特に印象に残っているのが、2400段を過ぎたところにあるこのログハウス風休憩所。この後に及んで、休憩中にまで階段を上りたくはありませんが(笑)、二階建ての立派な木造の建物です。子どもはワクワクするんじゃないでしょうか、この感じ。
こんな設計の工夫も、ただ長いだけの石段遊歩道では終わらない「日本一の石段」の魅力の一つだと感じました。
リフレッシュしたところで、2500段目に到達。
ここから3333段目までは、登り切ることだけを考えてひたすら進んでいこうと思います!
【ラスト!パート7】3333段目まで
実はこのパートは、あまり記憶がありません(笑)
さすがに「どんだけ続くん、これ…」と半ばうんざりしながらも、最上段を踏むことだけを目指して淡々と上りました。
【パート4】の1000~1700段付近で立ち話をして、私を追い越していった人たちが続々と下りてきたのもこの辺り。
「わー、がんばったんですねー! おつかれさまです!」「なんとか登れましたよー!」「もう少し、がんばれ~!」など声をかけ合って、こちらも励みになりました。
薄々気付いてはいましたが、私は平均的な人よりだいぶペースが遅いようです。
ひたすら上るうちに、気付けば3000段目に到達!
ここまで来ると、俄然やる気が戻ってきます!
そしてこのあたりから、ロシア、韓国、南アフリカ、ブラジル、アメリカなど世界各国の御影石を使った石段が目白押しになってきます。
それぞれをまじまじ見てみても、素人目には違いは分かりませんでしたけれど、ゴール付近の特色づくりには良い試みだと思いました。なんか、世界中に応援されている気分(笑)
段数もいよいよ3100段を越え、こちらがラストのストレート!
3200…
3300…
3333!
『白龍が昇るがごとし石段は 3333で日本一』です!
最上段に到達して嬉しいのはみな同じですので、この石碑あたりは、わいわいきゃっきゃと元気なエネルギーがたっぷり漂っており、中には感極まって「白龍が~」と音読しちゃってる可愛い奥様もいらっしゃいました。
とにかく、登ったぞ~!
登り始めてから約3時間!ここまで記事を読んでくださったあなたも、おつかれさまでした!
足腰・体力の具合はどうかというと、ホッとした気持ちや嬉しい気持ちの方が強くて正直よく分かりませんが、けっこうへとへとです。ここでもう帰りたいのもやまやま。
実際ここで引き返す人が大半のようでしたが、せっかく初めて来ましたし、周辺の様子を見てみることにします。
最上段付近と展望東屋
階段を登った先には、いい眺めが広がるわけでも、休憩場所があるわけでもありません。周辺はただの広場で、ちょっと拍子抜け。
ずらりと立ち並ぶ看板を見てみると…
「歓迎 ようこそ泉村へ」「釈迦院へのご案内」とあります。
そうでした、この遊歩道は釈迦院への参道なんでした…。本来は階段を登って終わり、ということではないため、この広場もただの中継地的な場所なんですね。
ちなみに、「泉村」というのは平成の大合併前の名称で、いまでは「八代市泉町」となっています。
上の地図を見ると、釈迦院、けっこう遠そう……。ここで行かずには帰れませんが、休まずに行けるほどの元気もありません。とにかく東屋まで行って休憩したいと思います!
分かりづらい道なき道を登ってたどり着いた東屋では、すでに先客グループがお弁当を食べていました。お弁当スポットとして人気のようです。
東屋からはこの景色。
やっぱり高いところに来たら、こういう景色が見たいですよね! がんばって登ってきて良かったです。
この東屋の隣りには展望台らしきものもありますが、木が茂っていて見通しがいまいちですので、眺めは東屋からの方が良いと私は思いました。
また、釈迦院への順路上にあるこの東屋には、釈迦院関連の案内掲示がいくつか設置されていました。特に気になったのがこの看板。
文字は日本語なのに全然 make senseしない! と一瞬かなり戸惑いましたが、落ち着いて見てみると左始まりの縦書きなんですね(笑)
釈迦院は、ここからさらに約1km行った標高約940mのところにあるとのこと。
1km…。
普段ならなんてことない距離ですけど、あの石段地獄の後では果てしなく遠い…。正直体力も限界に近いですが、後で後悔しないためにもがんばって歩いてみることにします!
釈迦院
ここからは、体力の第二次限界突破。カンカン照りの太陽の元、石畳の参道をひたすら歩きます。
途中で灯篭がなければ、本当にこの道で合っているのか不安になるくらいにひっそりと単調な山道です。
照り返しもきついので、夏場であれば帽子は必須でしょう。標高が高く、空気が涼しいのが救いです。
そんな中、ひたすら歩くこと10分…
ようやくお寺らしき建物群が見えてきました。
こんな山奥にあるなんて、住職さんは大変だろうなと思いましたが、石段とは反対側(八代側)からは車で来られるルートがあるようで、反対側にはあっさりと車が数台停まっていました。
こちらが、ぐるりとまわって正面から見た様子。
正面入り口脇には「熊本県及び泉村 重要文化財指定仏像」というタイトルの案内看板が立っており、それによると、「銅像釈迦如来立像」や「木造如来立像」など、計12体の仏像が重要文化財に指定されているとのこと。
しかも、11体は鎌倉時代のもので、残り一体は平安時代のもの。これは、すごいことなのでは?
その隣りにあった説明書きと寺の公式パンフレットの内容をまとめてみると、西暦799年(延歴18年)に「桓武天皇」の勅願によって「弉善大師(しょうぜんたいし)」という人が開基したお寺なんだそうです。
天台宗を基に真言宗、禅宗、浄土宗の四宗兼学の道場で、1449年(文政3年)には「比叡山延暦寺」の末寺でもあったという由緒あるお寺で、かつては “西の高野山” とも称された一大霊場だったそう。
1500年代後半にキリシタン大名の焼き討ちにあってしまいますが、1620年(元和6年)、加藤忠広公の時代に再建され、改修を重ねながら今に至る、と。
まさかこんな山の中にそんな歴史深いお寺があるなんて、思いも寄りませんでした。重要文化財の仏像の数々が焼けてしまわなくて本当に良かったですよね。
せっかくですから、門をくぐってお参りしてみましょう。
こちらが本堂です。階段の先にはおじいさん(住職さん?)が座っていて、パンフレットをくれました。その他、釈迦院についての冊子(100円)やお守りなども販売しているようでしたよ。
私はお寺関係のことは全く詳しくありませんが、楼門がとにかく立派で見ごたえがありました。
体力が残っていれば、初めての石段登頂時には立ち寄ってみると、「釈迦院御坂遊歩道」を登った喜びも倍増するのではないでしょうか。
いざ下山
釈迦院を後にすると、後は麓に向かうのみ。私の体力は既に、バイクでいうところの「リザーブタンク」も使い切った状態です。
足が棒のようとはこのことか、という感じで、本気でよろよろしか歩けません。
来た道を1km戻り、ようやく先ほどの展望東屋が見えてきましたが…ここからまた3333段を下りなければならないなんて、信じられない…。
時刻は13:40頃ですが、展望東屋では先ほどとはまた別のグループが休憩しているようでした。やはり人気スポットなんですね。
そして再びやって来た最上段からは、果てしない階段地獄…。よろよろでもいいから、とにかく無事故で下山できるようにもうひと頑張りです!
歩き始めて思いましたが、下りは下りでけっこう脚力を使うものなんですね。上りのときと使う筋肉が違うのか、また違った辛さがあります。
こんなにガクガクしたことが、今まで私の足にあったでしょうか。(いや、ない。)
下りの道中の詳細は泣く泣く(?)割愛しますが、東屋ごとに休憩しながら、1時間半かけてゆっくり下山。「あれ、こんなんあったっけ?」と、往路には気付かなかった石碑に気付いたり、帰りは帰りで楽しかったです。
途中で面白かったのが、石段を数えながら駆け上がる二人のちびっ子とすれ違ったときです。
姉弟とみられるその子たちは「32、33、34…」と必死で数を数えながら、私の気配を目の端に察知するや、「こんにちは35!、36、37…」という風に、こちらの方も見ずに超高速で挨拶。
「挨拶励行」の精神が育っている証拠ではありますが、微笑ましくも可笑しくもあり。子どもって面白いです。
ちびちび下るうちに、あたりは段々と夕方の光に。私だったら頂上に着くまでに日が暮れてしまうのではないかという時間帯ですが、これから登るという人々も少なくないようでした。
かなり麓まで近づいたころ、「(上まで行くの)やっぱきついですか?」と聞かれたりもしましたが、これから登る人に「ええもう、足が棒のようです」とも言いたくなかったので(笑)、「とりあえず1000段まで行くと、自分のペースが掴めてくると思いますよ」と偉そうにアドバイスしたりして。
でもほんと、自分の中では1000段目が一つのラインだったかな、と振り返ってみて思います。
最後のストレートを下り、無事に帰還!ということで、私の体験レポートもこれにて終了です。
ちなみにこの後は、350mlの冷たい水(ほんのり桃味)をすぐそこの自販機で買って、即効で全部飲み干しました。
おわりに
あらためて地図で見ると…
せっかくですので、今回の道のりを地図で確認してみましょう。
「OpenStreetMap」で見てみると、石段がオレンジ色の点線で示されていました。
麓の石碑には「石段は延長1,900m」とありましたので、さらに釈迦院(★)までの道のりを合わせると片道約3kmということになるでしょうか。
地図でみると一目瞭然、段数だけでなく、距離もけっこう歩いたんだということが分かりますね。
「大行寺山」の標高は957mで、釈迦院の標高は940m。ということは、これはもう「石段を使った大行寺山登山」と言って差し支えないと思います。
人はなぜ登るのか?
この石段を登る人の中には初めての人もいればリピーターの人もいて、その人によって登る理由はもちろんそれぞれだとは思いますが、なぜ3333段もの石段に登ろうなんて思うのでしょうか。
初めは、ほとんどの場合が「自分へのチャレンジ」や「日本一のタイトルを制覇しておきたい」「どんなもんか体験してみたい」というような、挑戦心や好奇心から登るのだと思います。私もそうでした。
では、リピーターの人たちはどうなんでしょう。
私が今回登ってみてまず思ったのは、肉体的に「きついー! やめたいー! でもがんばる!」と心底思うことって、大人になってからは特に、日常生活ではどんどんなくなってきたな、ということです。マラソンや激しいスポーツが趣味の方は、そうでもないのかもしれませんが。
体がどんどん辛くなってくる中、自分の体と対話しながら、加減を見ながら目標達成に向かうということは、自分にとってはある意味とても贅沢な時間ですよね。自分の存在を大切にするということにも繋がるかもしれません。
大自然の中であればなおさらです。
人々とのふれあいあり、体力の増強あり、自然の中でのリフレッシュあり、登る度に何かしらの発見ありとあれば、リピートする気持ちも分からなくはありません。
私は、この記事の編集でまた嫌というほど石段と向き合いましたので、当分はごめんですけどね(笑)
また、この遊歩道では総じて、自然系観光地にありがちな “放置され感” や荒み(すさみ)を感じることがありませんでした。掃除用の箒が置いてあるとか、トイレットペーパーがちゃんと補充されているとかいった些細なことですが、その場所のことを気に掛ける人がいるというのは、雰囲気から分かりますよね。
これは、管理する側の姿勢だけでなく、訪れる側の意識にもよるものなのかな、と思いました。
というわけで、「苦行」だけれども「リピートするほどの魅力のある」素晴らしいスポットでした!
みなさんも、ご自身が一体どれくらいで登れるものか、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか☺
この石段から10kmほどのところには「道の駅 美里 佐俣の湯」(大人500円※2024年3月時点では600円)もありますので、セットで訪れるととてもいい一日になること間違いなしです!
きれいでモダンで、露天風呂も気持ちよかったですよ。
当記事は以上となります。長~い記事に最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。
どなたさまも、よい一日を☺ Polly
※当記事内の写真および現地情報は、2019年9月15日時点のものです。