こんにちは、福岡市在住の自然観光ファン、Pollyです。
今回の記事は、先日2019年10月に初めて訪れた「西公園」(福岡市中央区)で思いがけず目の当たりにした捨て猫・野良猫問題がテーマです。
「公園を訪れてみた一般人が感じたこと」を入口として、なぜ猫を捨てるべきではないのか、野良猫に餌をあげるときに知っておくべきルールとは、不妊治療は正義なのかどうか、などの問題について考えてみたいと思います。
私は動物愛護に関する活動をしているというわけではなく、専門的な知識もほとんど持ち合わせていませんので、文中では至らない部分も多いかとは思いますが、猫問題について真剣に考えてみる一機会としてお付き合いいただければ幸いです。
目次
西公園概要
言わずと知れた桜の名所・西公園は、大濠公園から北に1kmほどの海岸沿いにあり、豊かな緑や海景色を楽しむことができる風致公園※です。
標高48mほどの小高い丘の至るところに遊歩道が張り巡らされ、手軽な自然散策には最適。福岡藩の黒田如水(官兵衛)・長政親子を祀った「光雲(てるも)神社」や、遣唐使の時代に詠まれた万葉歌碑など、福岡ならではの深い歴史にも触れることができる一大観光スポットとなっています。
※風致公園:都市公園の中でも「特殊公園」というカテゴリーに属し、自然の風景や環境を楽しむことを目的とする公園のこと。(参考:福岡市緑のまちづくり協会サイト内「みどりの豆知識」)
“猫の公園” の現状
そんな西公園で近年、野良猫の増加が問題となっているようです。「100m歩くごとに猫に当たる」といっても大げさではないくらい、公園内のあちらこちらで猫を見かけます。
しかも、驚いたのがその「身ぎれいさ」と「人懐っこさ」です。
もちろん野良猫然とした個体もいましたが、大半の猫の毛並みはツヤツヤのふさふさ。人が近寄っても逃げもせず、無防備そのものです。むしろ「撫でて撫でて」と言わんばかりにすり寄ってくる個体さえもいました。
猫だらけなことで有名な神奈川県の「江の島」に行ったこともありますが、あちらの猫たちは目やにだらけだったり、毛がバサバサだったり、もっと野生的だったと記憶しています。
ところがこの西公園の猫たちは、明らかに “家猫感” が強い様子。残念ながら元は飼い猫だったのを捨てられたのか、事情があって家には連れて帰れずに “放し飼い” を続けている人がいるのか。捨て猫を可哀そうに思った誰かが餌を与えて続けているのかもしれません。
猫たちの様子から、少なくとも私の眼には、何世代にも渡って野良猫が住み着いているというよりは、ここ5年かそこらのうちに広まったことのように映りました。
だとすると、どんどん問題が大きくなってくるのもこれからなのでしょうか。
来訪者の立場として考えると、猫が好きな人には “必ず猫に会える場所” としていいかもしれませんが、中には猫や動物が苦手な人もいるはず。
猫にアレルギーがある人には、せっかくの観光が嫌な思い出に終わってしまうかもしれません。
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公園管理側の対応
公園管理事務所もこの状況を容認してはおらず、公園内では改善を呼びかける掲示物をいくつも見かけました。特に、東側駐車場付近や中央展望広場といった、車で乗り入れ可能かつ人の集まりやすい場所での呼びかけを強化しているようです。
捨て猫の情報は、いずれも2017年(およそ2年前)のものでした。
これらの掲示物には以下のようなことが記載されています。
- 野良猫に関する苦情が多発している
- 無責任な置きエサは住民に多大な迷惑をかける
- 動物の遺棄・虐待は罰金200万円以下の犯罪である
- 捨てるだけでなく、他所から移動させる行為も「遺棄」にあたり、100万円以下の罰金
- 猫も環境が変わるとパニックになる(虐待にも繋がる)
- 西公園では日々のパトロールによって個体識別を行っている(新たに増えればすぐに分かる)
- 動物管理センターで殺処分されている猫のほとんどが持ち込まれた子猫である
- 犬や猫の置き去り現場を見たら110番を!
さらに、野良猫問題への対応策として里親探しや不妊手術が挙げられており、方法が分からなければ一人で悩まず関係機関に相談するようにと、公園管理事務所や「一般社団法人 博多ねこ99ネットワーク(旧ライフリレーネットワーク)」の連絡先が記載されていました。
こういった案内を公園に来た人全員がしっかり読んで、何かしら考えるきっかけになったり、正しい行動に繋げていくことができれば少しずつでも問題解決に繋がるのかもしれませんが、そもそも問題を認識していなければ目にも留めないでしょう。
実際に捨てた人たちは、後でこの看板を見たでしょうか。たまに思い出して心を痛めるのでしょうか。それとも、「バレなくて良かった~」とでも思っているのでしょうか。
問題は全国規模
野良猫についてGoogleで検索してみると、問題を指摘しているページがずらりとヒットし、これは福岡の西公園だけの問題ではないことがよく分かります。
検索結果ページ下部にある「検索キーワード」の欄には、野良猫 寿命、野良猫 生態など純粋に野良猫について興味があると思われるものの他にも、野良猫 問題、野良猫 病気、野良猫 餌、野良猫 駆除、野良猫 保護といった、地域問題としてのものも多数。
例えば、野良猫 衛生で調べると、「野良猫にエサやりをしている方へ」「野良猫で悩んでいる人へ」「飼い主のいない猫による被害について」など、全国各地の自治体によるホームページが立て続けに並びます。
全てに目を通したわけではありませんが、問題となっていること、呼びかけられていることは以下のような内容です。
- 近隣地域の猫まで居つかせてしまう原因になる
- カラス・ハト・ネズミなどの他の動物まで呼び寄せてしまう
- ゴキブリやハエなど害虫の発生にも繋がり不衛生である など 猫による地域への被害
- 敷地内で糞尿をする
- ごみを漁ったり、花壇を荒らしたりする
- 発情期の鳴き声による騒音 など
猫が好きならまだしも、嫌いな人にとってはたまりませんね。
こうして野良猫に関する問題の数々をみてみると、猫を捨てることだけでなく、猫を放し飼いすること、飼っていない猫に餌をあげることも問題の大きな要因となっているということが分かります。
不妊治療していない猫であればなおのこと、もし責任者が誰もいないままに数が増えれば、猫たちはさらにたくさんの餌が必要になり、飢える猫や不衛生さから病気になってしまう猫も増えるでしょう。もちろん、上記のような地域問題も深刻化してしまいます。
そう言われてみれば、本当にもう、納得しかありません。猫を捨てる人の気持ちは分かりませんが、野良猫に餌をあげたことは自分もありますので、その場の自己満足だけの後先考えない行為だったんだなぁと反省…。
(おそらくその場では猫も嬉しかったでしょうけど、それはまた別問題です。)
「にゃんぱく宣言」に学ぶこと
ここで思い出されるのが「公益社団法人 ACジャパン」のテレビCM「にゃんぱく宣言」。
1979年にリリースされたさだまさしさんの名曲「関白宣言」のメロディに乗せて、なんとご本人による作詞で正しい猫の飼い方について訴えるCMソングが話題ですね。責任をもって最期まで飼い続けることの必要性に、あらためてハッとする30秒(もしくは15秒)。
※2019年度のキャンペーンCMだったため、テレビ放送は現在では終了済です。
飼い猫に限ったストーリーではありますが、猫問題全体への問題喚起にも繋がっていると思います。
初めて見たときは特に「♬ 家の外に、出してはいけない」のところで、「あ、そっか、そうなんだ」と思いました。
“家の外に行けない” ことは猫にとって “かわいそう” だという視点しかありませんでしたが、飼い主の立場としては、“責任を持って外に出さない” という考えが必要なのか、と。
不妊治療をしていたとしても、外の世界には猫自身がコントロールできないことで溢れていて、事故にあったり、病気をもらったり、縄張り闘争に巻き込まれたり、地域に迷惑をかけてしまうこともあるかもしれません。
ペットとして飼い始めたのなら、猫が家から出られないことを飲み込んだうえで、家の中で最大限幸せに暮らしていけるようにお世話するのが飼い主の務め。
その覚悟が必要なことを理解していれば、たとえ飼い続けることができなくなったとしても、せめて信頼できる誰かに譲ろうと思うはず。捨てるなんて、ありえないことですよね。
猫たちの権利
ここまで、人や地域側から見た話をしてきましたが、猫たちはどう思っているのでしょうか。
どんな環境に追い込まれても、お腹が空かずに済んで、本能に従って子孫を残すことができることが彼らの幸せなんでしょうか。
野良猫問題の主な解決策として挙げられるのが「不妊治療」ですが、上記までの問題を理解した後でも、まだ私はどうしてもこの処置を施すことに100%賛成はできません。少なくとも、「それが正義だ!」とは言い切れない。
どういう風に生まれてきたかは別としても、猫たちには「生きる権利」とともに「繁殖する権利」もあるはずだからです。しかし、一匹だけで暮らす飼い猫や不妊治療された猫は、「繁殖する権利」を奪われてしまいます。これは、犬や他のペットにも言えることですね。
では、その権利を守ってあげるために、かならず一度は繁殖活動の機会を与えるべきなのかというと、それはそれでまた別の問題が浮上してきてしまいます。
ペットの個体数増加がとまらない…。
何匹も飼えないという家は子猫のもらい手を探すことになり、誰ももらってくれなければどうなるでしょう。子猫受付専門機関があったとしても、すぐにパンクしてしまうでしょう。
野良猫だって、人間社会に暮らしている限りは絶対的な天敵もおらず、その上全てのメスが子どもを産めば、数は増える一方になってしまいます。
殺処分に回されるために生まれてくる命があっていいわけがありません。
ということで、ペットとして動物を飼う世の中、飼えないからと捨てる人がいる世の中は、「不妊治療が正義である」と言い切れる世界でもあるのかもしれません。
また、不妊治療には「繁殖期のストレス軽減」「オスのスプレー尿がなくなり、匂いの緩和に繋がる」「生殖器の病気にかかりにくくなる」などのメリットもあるようです。(参考:東京都杉並区公式サイト「飼い主のいない猫の世話をしている方へ」)
猫たちの意思や本能は無視か、と悲しい気持ちにもなりますが、猫たちは意外に何も考えていないかもしれず、安全と食べ物が確保されていればそれだけで幸せなのかもしれません。そこはもう、猫のみぞ知る、です。
人為的に不妊にしてしまうことへの抵抗は拭えませんが、かといって私は、捨てられた子猫たち全員を引き取って育てることはできません。ならば、割り切るしかない。
せめて、猫たちが「幸せに暮らす権利」だけは確保できることを祈るばかりです。
解決に必要なのは共通意識
猫問題について真剣に考えてみて強く思ったのは、野良猫に対する正しい対処法を皆が認識・共有することの必要性です。
まずは、「猫を無責任に捨てない」。捨てられた猫がどうなるのか、その地域にどんな影響を及ぼす可能性があるのか、ちゃんと考える。
殺すのはかわいそうだから、せめて他にも猫がいるところに、と思って捨てるのかもしれませんが、その人がかわいそうだと思っているのは「猫を処分しなければならない自分」で、その猫の運を天に任せて自分は逃げているだけなのではないでしょうか。
どんな事情があるにしても、それはやっぱり無責任だと思います。
次に「不妊治療をしていない猫を放し飼いしない」。自分の猫だという場合も、捨て猫や野良猫に餌を与え続ける場合も、どちらも当てはまります。
自分の猫がもし外で子どもをつくったら、もしもペット感覚で餌を与え続けて繁殖してしまったら…子孫代々、最後まで面倒を見ることができますか? ということですよね。
それはできないけど餌を与え続けたいのであれば、やはり不妊治療は欠かせないのでしょう。そして、よほど周囲に迷惑をかけていないと言い切れる環境でない限りは、自分の家の敷地から出さないように飼うべきだと思います。
もっと法律や地域の目が厳しくなったり監視カメラの設置が進んだりすれば、上記の「猫を無責任に捨てる人」「無責任に餌を与え続ける人」は減っていくのかもしれませんが、なくならない現状では、どう対応すればいいのでしょうか。
「捨てられた猫は飢え死にすべきだ」というのはあまりにも残酷な極論ですし、「餌をあげなければ増えない」と言ってしまうのもあまりに乱暴。
でも、誰も「捨て猫・野良猫を見殺しにしましょう」という話をしたいわけではないはずです。
そこで非常に参考になるのが、この記事内でも一度話に上った、各自治体のホームページです。お腹を空かせた野良猫に餌をあげることを否定することなく、対応策や必要な知識などを案内しています。
いくつかのページをまとめてみると、求められるのは以下のようなルールの認識です。
- 餌は器に入れて与え、食べ終わるまで見届ける(置き餌はしない)
- 餌はなるべく決まった時間に、適切な場所で与える
- 糞尿の始末やトイレの設置も責任を持って行う
- 不妊去勢手術を行う(自治体によっては手術代の一部助成を行っているところもある)
- 近所の理解を得て世話をする(地域に迷惑をかけていないかどうか、よく観察する)
※参考元:東京都清瀬市サイト内「野良猫にエサやりをしている方へ」、杉並区サイト内「飼い主のいない猫の世話をしている方へ」、板橋区サイト内「猫について(飼い主のいない猫・外に出された飼い猫)」
その猫が不妊去勢手術済みかどうかを見分けるため、耳先をV字カット又は水平カットしている場合があるそうですので、覚えておくと役に立つことがあるかもしれません。
先日西公園で撮った猫たちの写真を見返してみたところ、実際に耳の先が切れた個体がいたことを確認できました。
ちなみに、飼い主のいない猫のことを「野良猫」、飼い主はいないが地域の理解のもとで共同管理されている猫のことを「地域猫」と呼ぶそう。ということは、上の写真の猫はおそらく「地域猫」ということでしょう。
野良猫問題については我らが福岡県や福岡市でもしっかり取り組まれていますので、詳しくお知りになりたい方は県の公式サイト「始めてみませんか!地域猫活動」や市動物愛護管理センター公式サイト内「飼い主のいない猫について」をご参照ください。
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「野良猫に餌をあげてはダメ」というフレーズを耳にしたことはあっても、その理由や背景までは考え切れていなかったことを、今回の記事を書いてみて自覚することができました。
かつて野良犬の存在が問題となったように、今度は野良猫の存在が問題となっている昨今、個人の感情だけで「かわいいね~」と愛でたり餌をあげたりするのではなく、社会の一員として正しい認識を持った上で可愛がるということが必要なんですね。
不妊去勢手術についても、前ほどの抵抗感を持つことなく受け止めることができるようになったと感じます。
もしも私のように、今まで野良猫問題についてあまり深く考えたことがなく、偶然この記事を読んで知った! という方がいらっしゃたなら、あなたと私、少なくとも2人は「野良猫への考え方」を知り、おぼろげにでも他の人に説明することができるようになったということ。
西公園の環境維持と、そこで暮らす猫たちの幸せ、そして日本中の猫事情の向上に、微力ながらでも役に立つことができるなら幸いです。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
Polly
※記事内の写真はすべて、2019年10月26日時点のものです。