こんにちは。福岡市在住のアラフォー女子、Pollyと申します。
私は九州生まれ・九州育ちですが、小学生の頃にテレビ番組『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』のシリーズが大好きだったこともあり、物心ついたときから北海道の自然には大いに憧れておりました。
大人になってから北海道に3~4年ほど移り住んでみた経験もあり、今でも北海道は私の「第2の地元」だと勝手に思っております。
当然『北の国から』のことも子どもの頃からずっとリアルタイムで観てきたかというと、全くそうではなく、初めてまともに観たのは大学生の頃、2002年にテレビ放映された『遺言』でした。
まさかそれが壮大な国民的ドラマシリーズの最終話であるとは知らず、テレビで「4年ぶりに帰ってきた!」「ついに完結!」などと言っていることにもピンと来ないまま、なんとなく観てみたのです。
それからは言わずもがな、「何度でも見たいドラマ・映画」の殿堂入り。数年おきに全話を一気見するほど、ファンになりました。
- 連続ドラマ’81’82(45分 or 46分×24話)
- ’83冬(91分)
- ’84夏(91分)
- ’87初恋(120分)
- ’89帰郷(133分)
- ’92巣立ち(前編118分、後編149分)
- ’95秘密(183分)
- ’98時代(前編144分、後編166分)
- 2002遺言(前編127分、後編152分)
当記事では、連続ドラマの記念すべき第1話のあらすじを詳しくまとめてみたいと思いますので、どんなお話だったかを思い出したいあなた、動画を見ずに内容を知りたいあなた、ぜひお付き合いくださいませ。
※著作権の都合上、ドラマ画像を載せることは控えさせておりますので、ご了承の程よろしくお願いいたします。
目次
クレジット
脚本:倉本聰
音楽:さだまさし
出演:田中邦衛、いしだあゆみ、吉岡秀隆、中嶋朋子、岩城滉一、熊谷美由紀、地井武男、清水まゆみ、今井和子、南雲佑介、尾上和、永浜三千子、古賀プロ、大滝秀治、竹下景子
プロデューサー:中村敏夫、富永卓二
美術:藤森信之、技術:佐藤実、カメラ:竹越由幸、照明:本間利明、音声:西田貞雄、映像:五十嵐万治、録画:森田繁夫、美術製作:的場忠、美術進行:一色隆弘、タイトル:川崎利治、大道具:山県昭三、装飾:相馬徹、持道具:大里誠一、衣装:萓田典弘、メイク:大田修、視覚効果:中山信男、音響効果:篠沢紀雄、編集:中田安優、写真:島田和之、演出助手:阿部久、制作補:森井勝美、記録:石塚多恵子
協力:富良野プリンスホテル、東亜国内航空、北海道富良野市、北海道文化放送
演出:富永卓二
制作著作:フジテレビ
「第1回」あらすじ
東京の喫茶店にて
ドラマは、東京のとある喫茶店から始まります。
重苦しい空気の中、窓際の席で向かい合って座るのは、黒板令子(いしだあゆみ)と宮前雪子(竹下景子)。
雪子「お義兄さんたち、夕べ発ったわ。姉さんどうして送りに来なかったの。純も、螢も、寂しそうだったわ。可哀そうで、まともに見てられなかったわ。子どもたちにどういう罪があるの」
この台詞から、雪子は令子の妹であること、令子には2人の子どもがいること、夫は子どもたちを連れて昨日東京発ったこと、などがぼんやりと分かります。
令子「あんたもずいぶん残酷なこと言うわね。来たかったわよ。できたら螢たちも、力づくでも取り返したかったわ」
雪子「今頃勝手なこと言うもんじゃないわよ。悪いのはもともと姉さんのほうじゃない。お義兄さんの気持ちほんとに考えたの」
令子「分かってるわよ、もう言わないでよ、悪いのは私よ、よく分かってるわよ。だけど…」
ここで、BGMに流れていたスメタナの『モルダウ』が盛り上がります。
令子「あの人には東京は重すぎたのよ」
雪子「子どもたちにも?」
別居 or 離婚の原因は令子の方にあり、そのせいで子どもたちが、母親に見送ってもらえないままに住み慣れた東京を離れなければならないことに、雪子は憤りを感じているようです。
ここで令子は、ほんの少し皮肉めいたような寂しそうな小さな笑みを浮かべ、こう切り返します。
令子「…母親の気持ちあんたに分かるの? 本当は私、上野に行ったわ」
やるせない感じで竹下景子(雪子)がたばこに火をつけ、第1幕は終了です。
汽車の中
汽車が線路を走る音がフェードインし、画面には、車内で物思いに耽る背広姿の中年男性が映し出されます。
いしだあゆみ(令子)の言う“東京は重すぎた男”、黒板五郎(田中邦衛)です。
車窓にぴったりとくっ付き、生まれて初めて見る大自然の景色に歓声を上げる娘・黒板螢(8歳、中嶋朋子)。その声に五郎は我に返り、汽車に並走して流れる川の名前を子どもたちに教えます。
五郎「空知川だよ」
その様子から、この地が五郎の故郷であることが窺えます。
護岸工事のされていない、自然のままに流れる大きな川や、ほんのり秋色に色付き始めた山々、長閑な農村風景。それを息子・黒板純(9歳、吉岡秀隆)は、感激と戸惑いと不安の入り混じったような表情で眺めています。
ここで、純の記念すべきモノローグ第1弾。
<恵子ちゃん、お見送り、ありがとうございました。北海道に、今日、着きました―>
空知川の風景にギターの柔らかな音色が重なり、かの有名なさだまさしさんによる主題歌『北の国から〜遥かなる大地より〜』の流れるオープニングへ。
クレジットの流れる2分弱の間、次々に映し出される富良野の雄大な自然風景は見るものを惹きつけ、その調べとともに、これから始まる物語の世界に引っ張り込んでくれます。
布部駅に到着
「第一回 昭和五十五年 秋」との字幕とともに、ホームに滑り込んでくる2両編成の赤い汽車。プラットホームに立つ駅名表示看板には「布部(ぬのべ)」とあり、「富良野」のひとつ隣りの駅であることが分かります。
鳥のさえずりの中、汽車の自動ドアからぴょんと飛び降りる子どもたちと、ちょっぴり引き締まった顔付きで子どもたちを誘導する五郎。
純は赤い帽子にボーダーの襟付きシャツ&デニムの短パン、螢はデニム地の膝丈スカート&赤色のポシェット、髪の長さは背中くらい。いかにも都会っ子という感じです。
山しかない、ザ・田舎な風景の中を駅舎に向かって歩く3人に、「こっちこっちー! こっちだよ!」と、改札口から満面の笑みで手を振る元気な青年が登場。五郎の従兄の息子・北村草太(岩城滉一)です。
カーキ色のジャケットにジーパンというラフな服装の草太は、「よく来た、よく来た!」と言いながら、早速子どもたちの肩を両脇に抱きつつ、車に向かうまでのわずかな間にも気さくに喋りまくります。
草太「お前が純か。まぁ純って面でもないもんな。お前は何つったっけ。あー、螢なぁ。いやいや洒落っぽい名前つけちゃって、夜になると尻が光るんじゃないかい。おじさん、この子めんこいわ~、奥さん似だな」
軽い・ガサツ・デリカシーのない、と3拍子揃った感じの草太ですが、人好きのする親しみにあふれた雰囲気で、しかもかなりのイケメンです。
4人はそのまま草太の水色のステーションワゴンに乗り、田舎道を草太の実家の牧場へ。

北村家(昼間)
草太の車が、赤いサイロのある酪農牧場へと入ってきます。厩舎で作業をしていた草太の母・北村正子(今井和子)は、車を降りて歩いてくる4人を見るや、掘っ冠りをしたまま走り寄って出迎えます。
五郎が「お世話になります」と頭を下げたことから、3人は今晩、こちらに泊めてもらう予定である様子。
父親に続き、「こんにちは」と声を揃えて礼儀正しく挨拶をする子供たち。正子も「めんこいねぇ、子どもかいゴロさんの。よう来た、よう来た、疲れたっしょ」と、北海道弁丸出しで暖かく対応。よく喋る感じが草太にそっくりです。
そんな正子が「あ、アンタ!」と声を掛けた先に立っていたのは、従業員らしい若い男性を従え、稲わらを運ぶ作業中だったらしい草太の父・北村清吉(大滝秀治)。五郎の従兄です。
離れたところからすぐさまお辞儀をする五郎ですが、なぜか清吉は何とも言えない無表情。草太や正子とはだいぶ違った、物静かなタイプの人物のようです。
ここからはしばらく『純のテーマ』をBGMに、牧場で作業する大人たち、厩舎で牛と遊ぶ子供たち、車の運転席でギアの具合を確かめる五郎などが次々と映し出され、そのうち日が暮れて夜に。
北村家(夜)
食後と思われる北村家の茶の間の隅で、五郎が電話をしています。
五郎「もしもし、中ちゃんか、いろいろありがとう。ああ、さっき着いた。え? いとこんとこだ。ああ、北村の」
子どもたちは台所側のテレビの近くにおり、草太兄ちゃんが見守る中、一緒にきゃっきゃと歌番組を見ています。おかげで茶の間中に聖子ちゃんの『青い珊瑚礁』が響き渡り、五郎さんの会話にはちょっと邪魔な様子。
それを察した清吉(大滝秀治)が後ろで「おい、ちっさくしろ」と草太に言って、ボリュームを下げさせます。
その後の五郎と「中ちゃん」という人物の会話や、電話後の五郎と北村夫妻との会話から、
- 中ちゃんは五郎とは旧知の仲で、五郎がこれから乗る車やこれから住む家のことなど、“何から何まで”助けてくれているらしい
- 五郎は明日の朝、中ちゃんに会いに行くらしい
- 五郎はこれから、自分が生まれ育った家で、子どもたちと新たな生活を始めるつもりらしい
- 家は長いこと放置されており、相当荒れた状態である
- 五郎と両親がその家から出た理由は夜逃げだった
- 五郎の両親は既に他界している
- 北海道はこれから冬に向かうところであり、東京育ちの子供たちにとってその家に住むことは酷なのではないかと周囲は心配している
というようなことが判明。
とにかくずけずけと立て続けに喋る正子を追っ払いたかったのか、清吉は「おい、氷下魚(コマイ)割いてマヨネーズと一緒に持って来い」と命じ、正子はむすっとしつつも退場。ここからは短く太い男の会話です。
清吉「別れたんか」
五郎「令子かい」
清吉「ああ」
五郎「…うん」
清吉「子どもたちよく、こっちに付いて来たな」
五郎「男がいるんだ。一緒に住んでる」
清吉「うん…。まぁこの人生、いろいろあるさ」
ここで純の恵子ちゃん宛てモノローグ第2弾。
<恵子ちゃん。僕は今、富良野のおじさんのうちにいる。ほんとは、内緒にしたかったんだけど、父さんと母さん別れちゃったんだ。母さんは、よそに好きな人が出来て、父さんを置いて、半年前出てった。母さんはキレイだし、頭もいいし、美容師の仕事も忙しいし、いつも頼りない父さんとは、もともと釣り合いが取れなかったってわけ。母さんは、僕や螢のことを、自分と一緒に連れていきたかったらしいんだけど、そのことに関しては、父さんはつっぱって、どうしても「うん」とは言わなかったみたい。おかげで僕らは、父さんの故郷の北海道に来ることになっちゃった。でも…>
モノローグが流れる間、画面は3人並んで白い布団で眠る五郎、純、螢を映し出し、モノローグの最後の一文に差し掛かったところで、純の声のトーンが少しだけ明るくなります。
<恵子ちゃんがこの前言ったように、北海度はロマンチックです>
麓郷の中畑木材へ
翌朝。3人が新しい家での生活を始める日です。
<ぼくらがこれから暮らすところは、昔、父さんが育った場所で、富良野から20キロも奥へ入った麓郷という過疎の村で―>
3人は五郎の白いトラックに乗り、紅葉の始まったばかりの木々に囲まれたあぜ道を抜け、前富良野岳の麓をまずは「中ちゃん」のところへ向かいます。
ここでようやく、「中ちゃん」こと中畑和夫(地井武男)が画面に登場。
中畑さんは五郎の同級生であり、麓郷で「中畑木材」を経営しています。今回の五郎親子の移住の下準備をいろいろ助けてくれており、3人がこれから暮らす家に、ストーブやランプなど、当面の暮らしに必要そうなものを前もって運び込んでおいてくれたようです。
それだけでなく、朝から「熊」というあだ名の若手従業員まで送り込んで、家を整えておくように指示してあるとのこと。
「悪いなぁ」との五郎の言葉に、「何も」と気さくに答える頼もしい中畑さん。4人は「中畑木材」を後にし、皆で五郎の家へ向かいます。
その車中で中畑さんから、これから住む家が“西部劇に出てくるようないい家”で、裏の森にはキタキツネやリス、エゾシカなどの動物たちが住んでいるということを聞かされ、「やったぁ!」と螢は大喜び。
無邪気な妹とは対照的に、純の方は熊が出ることのほうが心配なようですが…果たしてどんな家なのでしょうか。
ボロ家との出会い
車を停め、荒れ果てた茂みをかき分けて現れた家は、とんでもなくボロでした。

古い木造のその家は、廃屋そのもの。壁の板は剥がれ落ち、屋根には大きな穴が開き、とても人が住める状態には見えません。
あまりのボロ具合にげんなりし、こちらもさすがに驚いた様子であたりを見回す螢に耳打ちする純。「これが俺たちの住む家かよ…」
それから、全員総出での廃屋の手直しがスタート。五郎は壁の修理、熊は屋根の修理、中畑さんは草刈り。そんな中、子どもたちも子供たちなりに、荷物を運んだり床を掃いたりして手伝います。ただし純の方は、「信じられないよ!」と不満でいっぱいです。
ここで、純と五郎の名会話 その①。
純「父さん、水道の蛇口がどこにもないんです」
五郎「水道そのものがないんですよ」
純「えー!?」
五郎「この裏の森に入って行くときれいな沢があります。それが今日からうちの水道です。螢と水汲んで来てください」
純「何に汲むんですか!」
五郎「鍋か何かがあったでしょう」
純「あるけど、汚くて使えません!」
五郎「ああ、ちょうどいい、きれいに洗って来てください」
純の方は見向きもせず、黙々と作業を続ける五郎。
あまりの予想外の展開に頭が付いて行かず、しばし立ち尽くす純でしたが、気を取り直し、妹を連れて沢とやらに向います。純は片手に鍋、螢はバケツ。どちらも相当古そうです。
沢へ水汲みに

沢へ水汲みに行く道中、ポジティブでしっかり者の螢と、グチグチと文句を言い続ける純との掛け合いが続きます。
「道なんか全然ないじゃないか」「踏んだ跡あるわ」
「急ぐなよ」「急いでないもん」
「熊に気を付けろよ」「熊なんていないよ」
「わー、見て見て、可愛い花! なんだろう」「なんだっていいだろ」
「摘んで行っても叱られないかな」「知るかそんなこと」
「自分で行けばいいんだよな、父さん」「ほら聞いて、沢の音!」
熊笹をかき分けつつ森の中を歩き、無事に沢を見つけた二人は、並んで鍋&バケツをゴシゴシと洗います。その最中も、純のグチグチは止まりません。
「信じられないよ、まったくもう。どうするの? あんなところに本気で済む気かよ。あれは家じゃないぜ、あれはもう小屋だぜ」
黙ってバケツを擦る螢。
「だから母さんに付いて行こうって言ったんだ。母さん付いて来てほしかったんだから。そうすりゃ今ごろこんな目に遭わなくても」
黙ってバケツを洗っていた螢の手が止まります。螢の顔を見る純。すると螢は、今にも泣き出しそうな表情で必死に涙を堪えているようでした。
「…ごめん」
「その話はもうしないって、約束したじゃない」
「ごめん」
そこでザバンと何かが水の中を動く音がします。
熊が出た! と思った2人はすぐさま逃げ出しますが、やって来たのは猟銃を持ったおじさんでした。ホッとするのも束の間、おじさんが川の少し上流でションベンをしたことが発覚。
「したっけ、何も心配いらん。2メーターも流れりゃ水はキレイになる!」と笑いながら通り過ぎるおじさんに唖然とする2人なのでした。
電気がなかったら暮らせませんよ!
子どもたちが沢から戻った後も、ボロ屋を修繕する作業は続きます。
そこへ草太が、食料を届けにやって来ます。手伝いで一緒にやって来たのは、農協のスーパーで働いているという若い女の子、吉本つらら(熊谷美由紀)です。
そのキャッキャした雰囲気から、およらく2人は付き合っているだろうと思われます。
五郎と挨拶を済ませた後、ボロ屋の中に食料を運び込み、そのあまりのボロさに驚くつらら。「おじさんたち、ここに住むの? いやぁ、信じられないね」
2人がしげしげと屋内を見回しているところに、奥の間の2階から純の声が聞こえてきます。
純「父さーん、電気のスイッチどこですかー」
草太が上を覗き込んで答えます。
草太「純坊、電気なんかねぇよ。このうちにはね、電気は入ってないの」
純「電気がないー!?」
驚きがいよいよ怒りに変わってきた純は、けっこうな剣幕で外壁修理中の父に詰め寄ります。純と五郎の名会話 その②のスタートです。
純「電気がなかったら暮らせませんよ!」
五郎「そんなことはないですよ」
純「夜になったらどうするの!」
五郎「夜になったら寝るんです」
純「寝るったって、だって、ご飯とか勉強とか!」
五郎「ランプがありますよ、いいもんですよー」
純「いい?! ごはんやなんかはどうやって作るの!」
五郎「薪で炊くんです」
純「テレビはどうするの!」
五郎「テレビは置きません」
純「けど…冷蔵庫は!」
五郎「そんなもんなまじ冷蔵庫より、ほっぽっておいたほうがよっぱど冷えますよ。ここでは冷蔵庫の役目と言ったら、ものを凍らさないために使うくらいで」
またも言葉を無くして立ち尽くす純を、中畑さんが呼びに来ます。これから薪集めに行くとのこと。
付いて来いとその場を離れる中畑さんの方を見、黙々と作業する父をもう一度見、そして諦めたように中畑さんの方へ歩き出します。「信じられないよ! 電気がなかったら暮らせるわけないじゃないか~、も~くそったれ~」とブツブツ言いながら。
長い一日が終わりに近づき、家も森も、オレンジ色の光に包まれ始めました。『純のテーマ』のチェロバージョンがしっとりと流れる中、森の中の広場で薪を拾う純や螢、ランプを取り付ける五郎、屋根の上で作業の仕上げをする熊さん。
裏の森から出てきた一匹のキタキツネが様子を窺うかのように家を見守る中、とっぷりと日が暮れていきました。
初めての夜
夜。五郎たちの家にはランプが点りました。ちゃぶ台を囲んで、薪で炊いた白飯を食べる一家。
家の中を眺めながら、「良くなったね~、ここまできれいになるとは思ってもいなかったぁ」と、五郎は満足げ。ホッとしたのか、昼間までとは打って変わってすいぶんリラックスした様子です。
しかし、純は腹を立てているのか、黙ってじっと五郎を見ています。
そんな純の様子はお構いなしに、これまたケロッとしている螢を相手に軽快な会話を始める五郎。話題は「馬」です。五郎が昔この家に住んでいた頃は、大きな馬を飼っていたのです。
螢「馬に乗れる?」
五郎「父さんが?」
螢「うん」
五郎「昔は毎日乗ってたもんだ」
螢「螢も乗れるかな」
五郎「ああすぐ乗れる」
螢「やったぁ、そしたら水汲みに馬で行けるよね」
五郎「ああ、行けるとも。なんだって馬が手伝ってくれる」
螢「学校に行くときも、馬で行けるかな」
五郎「行けるじゃないンすか。馬ってのはな、夜も、どんなに真っ暗闇でも、それからどんなに吹雪いたときでも、馬に任せて乗っかってたら黙ってうちまで連れてってくれる」
螢「ほんと?」
五郎「ほんとだぁ。馬ってのは、そりゃあ賢いもんなんだぁ」
螢「夜中でも目が見えるんだ」
五郎「見える。そう」
螢「最高! 螢、学校に馬で通う!」
五郎「ああ!」
螢「ロマンチックだね~」
五郎「ロマンチックだろぉ~」
純<何がロマンチックだ>
三段落ちのように、純の皮肉たっぷりの心の声が続きます。
<恵子ちゃん、詐欺だ。全っ然詐欺です。北海道がロマンチックなんて―>
北村家の茶の間にて
その頃、北村家の茶の間では、中畑さんと北村夫妻が晩酌をしていました。
正子「大丈夫だろうか、ほんとにほったらかしといて」
中畑「あの家じゃまず冬は無理だろな。あんな壁では寒さはどんどん通しちまう。なんぼストーブ焚いたって、表にいるのと変わらん。東京育ちの子どもらには無理だべさ」
加えて、五郎の家から200メートルくらいのところにあるミツバチの巣箱が、5日前に熊にやられたという話をする中畑さん。そのことを五郎に伝えはしたが、あの辺には昔からちょくちょく熊が出るんだと、懐かしそうにしただけで話は終わったという。
いよいよ心配になった正子は清吉に言います。
正子「ちょっとあんた、ほんとにやめさした方いいよ。大人だけならともかく子どもまでいるんだよ、なんもあんなとこに住まなくてたってちょっと無理すれば町の方に…」
しかし清吉は、どっしりと見守る姿勢である様子。
清吉「五郎には、五郎の考えがあるんだべ。あいつは、あいつなりに、東京でいろいろ。うん」
熊騒ぎ
子どもが寝静まった後、五郎は土間で一人、物思いに耽りながら包丁を研いでいます。
思い返しているのは、東京を離れる前に令子と話したこと。
令子「電気も水道もないところ? ちょっと、冗談もいい加減にしてよ! そりゃあなたはできるかもしれないけれど、純や螢はまだあの年なのよ? それを…ちょっと、冗談も休み休み言ってよ」
東京を一度も離れたことのない我が子たちを、いきなり北海道の、しかも電気も水道もない、マイナス20℃にもなるところに連れて行くという五郎にどうしても賛成できない令子は、自分が子どもを引き取りたいと強く主張します。
しかし、梃子でも動かない様子で黙り込む五郎。
五郎「…これまでずっと、親父としてあいつらに、俺は何一つしてやってない。俺は能無しだし、教育もなんも…。全部、君一人に任せっきりだった。君が出てってからずっと考えた。あいつらのこと、ずっと考えた。そしてそう決めた。俺悪いけど、そう決めた」
そうして笑顔を見せた五郎の顔はさっぱりとしており、誰が何を言ってもその決意は変わらないであろうことを物語っていました。
それでも納得できない令子が反論する声が次第にフェードアウトしていき、映像は東京の喫茶店から、ボロ家で作業中の五郎に戻ります。ランプに照らされながら、だた黙々と包丁を研ぐ五郎。
その頃、2階で螢と並んで眠る純は、怖い夢を見てうなされていました。
暗い森の中で螢を探す純。前方に現れた幽霊のような白い物体に襲われ、肩を白骨の手に掴まれます。「…お母さん! お母さん!」と、地面に倒れてもがきながら必死に助けを求める純。
しかし実際に純の肩を掴んでいるのは現実の螢で、純は螢の自分を呼ぶ声に、汗びっしょりで目を覚まします。
螢「お兄ちゃん、何か表を歩いてる…!」
こんな夜中に何かが表を歩いているということは…。事態の緊張感をすぐさま感じ取った純は、階下を覗き込み、小声で父に問いかけます。
純「父さん、熊ですか?」
五郎(の声)「分からん、そこにじっとしてろ…!」
ビビった子どもたちは速攻で一つの寝袋に入り、ぴったりとくっ付き合って、手を組んで必死にお祈りを唱えます。
一方の五郎は、たいまつを焚いて扉の前で構えます。「誰? 誰かいる…?」と声を絞り出すように問いかけるも、返事はなし。
覚悟を決めて閂を外し、ギーッと音のなる扉をゆっくりと開く五郎。
すると、火に照らされて目の前に立っていたのは、あの熊さんだったのでした。一瞬訳が分からず、腰を抜かして床にへたり込む五郎を、熊さんが助け起こします。
熊「中畑の和夫さんから、心配だから見に行ってやれって」
五郎「ほんとぉ~」
カメラは、力が抜けてへらへら笑う五郎をしばらく映し、一件落着。その日はそれで終幕となります。
朝、父と娘
翌朝。森の中を飛び回る野鳥たちやシマリス、エゾシカなどの野生動物の様子が、秋の香りの深くなった麓郷の自然を背景に映し出されます。
早速家の前で、トントンと木の枝を加工する作業をしている五郎。早朝はだいぶ冷えるのか、厚手の紺色のジャンパーを着ています。
そこに「おはよう!」と元気に玄関から駆け出してくる螢。
五郎「おはよう。寝られたか?」
螢「うん。お兄ちゃんはずっと寝られなかったみたい」
五郎「もう起きてんのかい、お兄ちゃん」
螢「ううん、まだ寝てる。気持ちい~い! 螢、水汲みに行ってくる!」
早速この生活に馴染んで、自分の出来ることを積極的にやろうとする螢。
五郎は「よし! 父さんも一緒に行くよ」と、2人は連れ立って、バケツと歯ブラシを持って森の中を歩きます。道中、段差を2人でジャンプして笑い合ったり、木の上にクマゲラを見つけて一緒に見たりと、とっても仲良し&楽しそうです。
ほどなく沢に着いて、並んでしゃがんで歯磨きを始める2人。
すると五郎が、うつむいたまま螢に話しかけます。
五郎「螢」
螢「うん?」
五郎「君らをこんなところに連れて来て、君は父さんを恨んでるか」
歯磨きの手を止めて、五郎を見つめながら黙ってブンブンと首を横に振る螢。
五郎「…お兄ちゃんは?」
螢「分かんない。でも、大丈夫だと思う」
歯磨きした口の中を、モスグリーンのコップで汲んだ水で濯ぎ、ぺっと下流方向へ吐き出す五郎。相変わらずうつむいたままです。
五郎「…そうか」
螢「父さん」
五郎「ああ?」
螢「もしも私たちがいなくなっても父さんここで一人で暮らしたい?」
五郎「そうだな。…考えたけどな。でも、寂しいけどきっと、暮らしてただろうな。誰だってそうやって、最後はひとり…」
うつむきながらボツボツと話す五郎を蛍が遮ります。
螢「心配しないでもいい。蛍は、ずっと、父さんと一緒にいる」
どこまで事情を分かっているのか、健気で温かい、小さな娘の言葉。何も言わず、しゃがんだまま沢の中へ一歩入り、水でバシャバシャと顔を洗う五郎。ここでBGM、『遥かなる大地より』が流れ始めます。
螢(明るい声)「父さん!」
五郎が顔を洗いながら螢の指さす方を見上げると、木の上を動き回る1匹のエゾリスがいました。螢は立ち上がり、笑顔で、しかし少し潤んだような目で、リスをじっと見上げます。
ここで純のモノローグが入り、映像は、ボロ家の2階で寝たままじっと天井を見つめる純へ移ります。
<そのころ僕は、眠ってなんかいなかった。僕は真剣に作戦を練っていた。東京に逃げ出す作戦のことをだ>
つづく
おわりに
以上、「かなり詳しい『北の国から』第1話のあらすじ」でした!
健気に父親の側で新しい生活を楽しもうとしている螢と、東京に未練たらたらで不平不満ばかり言っている純の対比が面白いですね。
2020年の今でこそ、「電気もない、水道もない、周りは森」という暮らしは一種のライフスタイルとして都会の人にも受け入れられますが、都会的な贅沢が良しとされていた昭和の時代では、確かに子どもたちには「信じらんないよ! くそったれ~!」な世界だったかもしれませんよね。
次回の話以降も当分、純はグチグチ言い続けますので、乞うご期待(笑)
2話目以降のあらすじ記事のアップ予定は未定ですが、続きが気になる方は、DVDや動画配信サービスで見てみてください☺
最後までお読みいただき、どうもありがとうございました!! Polly(2020.9.20)
アマゾンユーザーの方は、支払い方法としてAmazonを選ぶと初回2週間無料トライアルになりますよ☺
私も、2週間で解約するつもりで気軽に加入しましたが…まだ見足りずに結局1ヶ月以上加入したままです(笑)
毎月888円+税。楽しいからまあいいかな!