みなさんこんにちは! 自然観光ファンの福岡市民、「しぜんfan」のPollyです。
今回の訪問レポートの舞台は、福岡県飯塚市。
福岡市からは、粕谷・篠栗・須恵・宇美などの町を抜け、山を越えた先にある筑豊の街です。
個人的には“まったく別の地域”という印象が強く、普段の生活の中で足を運ぶ機会はまずないのですが、「八木山(やきやま)バイパス」を使えばすいすいと、意外と1時間ほどで行けるんですね。
そんな飯塚市で今回私が訪れたのは、年に二回だけ一般公開されるという「麻生大浦荘」というお金持ちの旧邸宅です。
実は私、この秋に広報誌で見るまではこの場所のことを全く知りませんでした。同じく「聞いたことない」という方も少なくないのではないでしょうか。
しかしながら、“飯塚”で“麻生”と聞けば、まぁなんとなくどういう場所か想像も付くというもの。
場所の概要としては、
- 現代の貴族・麻生グループ絡みの古い邸宅である
- 普段は一般公開されていないが、年に二回、春と秋にだけ見学することができる
- 秋は紅葉の名所ともなっている
というものです。飯塚市観光ポータルには、「数寄を凝らした和風入母屋書院造りが美しい邸宅」、「大正末期に建てられた」などの説明があります。
期間限定でしか見られないとあれば、一度は訪ねてみたくもなりますよね。
というわけで、先日2019年11月29日(金)、言い出しっぺである母と連れ立って、見学に行ってみました。
そこで当記事では、行ってみた感想、実際の様子(写真あり)、ちょっとしたガイド情報なども合わせてまとめてみたいと思いますので、来年(2020年)以降のご訪問にお役立ていただけると幸いです。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします!
目次
「麻生大浦荘 紅葉特別公開」の概要
まずは、イベントの基本データをご紹介したいと思います。
【住所】飯塚市立岩1060番地
【公開期間】2019年11月23日(土・祝)~30日(土)
【入館料】無料
【開館時間】9:30~17:00(最終入館16:30)
※雨天時は庭園立入禁止
【駐車場】なし(体の不自由な方除く)
【トイレ】門外に仮設トイレあり
もちろん上記の公開期間はすでに終了していますが、参考までに記載させていただきました。
紅葉の時期に合わせた公開ですので、毎年同じくらいの時期(11月の最終週)になるのではないでしょうか。
駐車場については、一般利用向けの駐車場はありませんでしたが、近くのショッピングモールに停めることができました。後ほど、その詳細もご紹介いたしますね。
なお、体の不自由な方は、門のすぐ側にある関係者用駐車場に停められるようです。
上記の情報は、2019年に私が訪問した際のものですので、来年以降の情報はまた広報誌や公式HP等でご確認ください。
2019年12月現在で確認できることとして、2020年春の特別公開は実施されないそうですが、2020年秋の公開は確定しているようです。(情報元:飯塚市観光協会公式HP)
特別公開に行ってみた感想
次に、今回初めてこの「麻生大浦荘の紅葉特別公開」に行ってみた感想をまとめてみたいと思います。
私たちが出かけたのは、およそ一週間の特別公開期間のなかでも終盤、最終日の一日前でした。
- 紅葉は終わりかけていたが、場所によってはまだ楽しめた
- 大正硝子や明治時代調の洋間、長い畳廊下など、ちょっとしたタイムスリップ感が味わえた
- 麻生太郎氏直筆の書が飾られていたのが「ほー」という感じだった
- 一度は行きたい場所だが、一度行けば満足かも
- 同じ飯塚なら「旧伊藤伝右衛門邸」の方が見ごたえがあった(母親談)
建物の様式などにはまったく詳しくありませんので、あくまでもただの素人の見解となります。
総合的には「行ってみてよかったよね!」という場所ではありましたが、母曰く「伝右衛門(でんえもん)の方がたいぶ良かったばい」とのこと。「あっちのほうが大きくてきれい」なんだとか。
私自身は「伊藤伝右衛門邸」には未だ行ったことはありませんが、あちらも麻生家と同様に炭鉱で財を成した “筑豊の炭鉱王” で、NHKの朝ドラ『花子とアン』にも登場していました。
まぁ、こちらは見学無料、あちらは入館料310円ですからね。そのあたりの違いも出ているかもしれません。
せっかく飯塚まで足を延ばすのであれば、「麻生大浦荘」と「伝右衛門邸」の両方を訪ねてみるのもいいかもしれませんね!
【住所】飯塚市幸袋300番地
【入館料】大人310円、小・中学生100円
【開館時間】9:30~17:00(最終入館16:30)
【休館日】水曜日(祝日は開館)、年末年始他
【駐車場】あり
【公式HP】http://www.kankou-iizuka.jp/denemon/index.htm
飯塚、筑豊と炭鉱について
にわかに伝右衛門邸の紹介記事のようになってしまいましたが、どちらにしても、飯塚でお金持ちの邸宅見物を楽しむには、ある程度筑豊の炭鉱事情について知っておいた方が良さそうです。
ここで、自分の勉強のためにもちょっと調べてみました。
まず「炭鉱」というのは、明治初期に始まり、戦前まで続いた日本の一大資源産業。北海道の「石狩炭田」「夕張炭鉱」、福島・茨城の「常磐炭田」、福岡の「筑豊炭田」「三池炭鉱」などが特に有名です。
当時は文字通り、“一山当て”て大金持ちになった人たちもおり、筑豊炭田では麻生家(飯塚)・貝島家(直方)・安川家(北九州)が「筑豊御三家」と言われています。
そこには含まれないながらも、伊藤伝右衛門さんも大成功した人。
大きな苦労があってこその “一山” には違いありませんが、うらやましいですね~。
ご存じ、政治家の麻生太郎氏は、現・麻生グループのルーツである「麻生炭鉱」創始者である麻生太吉氏の三男の長男の長男です。(曾孫)
麻生太郎氏の母方の祖父は吉田茂ですし、もっと辿れば大久保利通が出て来たり、身内に親王に嫁いだ人がいたり、とにかくすごい家系なんですね。お金の力がそういった縁を呼んでいったのか、もともと優秀な血筋なのか。
「下々の皆さん」と言われても、もう腹も立ちません(笑)
少し話が逸れてしまいましたが、今回ご紹介している「麻生大浦荘」は、麻生太吉氏の長男・太右衛門(たえもん)氏の住宅として大正時代に建てられたものなんだそうです。
秋の麻生大浦荘訪問レポート
さて、ここからは、写真も交えつつ当日の様子をご紹介したいと思います! が、その前に、駐車場情報だけさっとご紹介しておきましょう。
駐車場情報
下の地図の、オレンジで囲った場所が「麻生大浦荘」です。

先ほどご紹介した通り、一般駐車場は用意されておらず、関係者・体の不自由な方の車両を覗いては ✘ より先に進むことはできません。
しかしありがたいことに、すぐ目の前の車道沿いには「スパイシーモール」というショッピングモールがあり、そちらに駐車することができました。
駐車料金は「入庫後24時間毎に400円」ですが、テナントを利用すれば3時間までは無料。
我々は、モールに入っている「Foodway」というスーパーマーケットでお昼を買いましたので、大手を振って(?)停めさせていただきました。
特別公開期間中の土日はけっこう混んだりもするのかもしれませんが、すぐ近くに別のコインパーキングもありましたので何とかなるとは思います。
とはいえ、混雑しそうな日は公共交通機関で行くのが一番かもしれませんね。
門周辺の様子
先ほどの地図の ✘ の先には、未舗装の緩やかな坂道が150mほど続いており、その先に見えてくるのが大浦荘の門です。

お手洗いは中にはありませんので、心配な方は、坂道の中ほどに設置されている仮設トイレで済ませておくと安心です。
門の内側のレイアウトとしては、まずは50mほど広い通路が続き、その先に邸宅、さらにその右側には庭園が広がるという感じ。
門をくぐってすぐの通路左側には、テントが連なった売店セクションがありました。

お弁当や肉まん、あったかい飲み物、地元銘菓などが購入できます。
飯塚といえば、銘菓の本店がいくつもあることでも知られていますからね! 吉野堂(ひよ子)、千鳥屋(千鳥饅頭、チロリアン)、さかえ屋(なんばん往来)など、たくさんのお菓子がずらりと並んでおり、手軽なお土産選びにも便利。
テントの中にはイートインできるテーブルセットも設置してあり、購入したお弁当などをその場で食べることもできるようでしたよ。
その他、お屋敷の玄関付近では、市内のランチスポット情報をまとめたプリントなども配布しており、観光協会の方々のがんばりが感じられて好印象でした。(偉そうにスミマセン)
邸宅内
屋内は土足厳禁ですので、靴はビニール袋に入れて各自持ち運ぶシステムです。
まずは、玄関から向かって左方向に進んでみました。

奥の部屋の西側と北側は全面ガラス戸になっており、色付いた木々の姿もちらほら。

お庭自体は、こちら側は小さめなようです。
それよりも目を奪われたのは、かつて仏間だったという部屋に飾ってあったこちら。

「天下為公 令和元年皐月一日 麻生太郎」とあります。見るからに直筆の、素人目にも素晴らしい書。
この「天下為公」とは、「天下をもって公となす」と読み、ご本人の公式サイトによると、“古代中国の経書・礼記の一節にある、為政者の政治理念を説く言葉”なんだそうです。座右の銘なんだそうで。
意味は、「天下は一握りの為政者のためではなく、公(民)のためのものである」というもののようなのですが、再び麻生氏の公式サイトを見てみると、“「公」とは官と民の間にある概念”という風に書いてあり、どうやら「公」=「民」とは捉えていない雰囲気。
官庁と民間企業、という意味での官・民なのでしょうか。なんか、こんがらがってきました…。
私はただの政治素人の一般人ですが、個人的には「公」はその社会に暮らす人全員、という意味合いであってほしいなぁと思います。実際、そう簡単でもないんでしょうけれど。
さて、次は長い廊下を一旦玄関方向へ戻り、そのまま対極の部屋のほうへ進んでみたいと思います。

途中、玄関間の隣には洋風の応接間があり、みなさん興味深げに足を止めて眺めていました。

元飯塚市歴史資料館館長による説明文が載った現地配布の案内書によると、これは「書院造りを基調とした洋広間」で、「明治期の大邸宅の代表的スタイル」なんだそうです。
どことなく和洋折衷、という雰囲気が素敵でした。
奥の広間の様子はこちら。


紅葉自体は最盛期を過ぎたのかな、という感じではありますが、メイン庭園に面しているこちら側はさすがの眺めです。南向きなので、部屋全体も明るい雰囲気。
邸内の平面図で数えてみると、二間続けてざっと40畳くらいはあるようです。畳は先ほどの廊下の途中までも敷き詰められていますので、それも含めるとかなりの数です。
先出の案内書によると、明治・大正時代には社員を多く集めて宴会ができるような宴会場やホテルがなかったため、こういった邸宅を会場として使用したのではないか、とのこと。
現在ではこの大浦荘は、来客の接待や社内の会合・イベントなど、会社のクラブとして使用されているそうです。
庭園
庭園は雨天時立入禁止となっている他、ヒールのあるパンプス等を履いている場合はスリッパに履き替えるシステムになっています。いずれも「芝を守るため」という納得の理由。
こちら、絵に描いたような「麻生大浦荘の外観」です。

敷地内には多くのツツジが見られますが、これは麻生太吉氏がツツジが好きだったからだそうです。
東側の森にはまだまだ紅葉が残っていて、とてもキレイでした。

実はこの森の樹木も、庭木同様に人の手によって植えられたものなんだとか。おかげで、こうして秋景色を楽しめるというわけですね。

おまけ:藤棚付近のベンチで休憩
庭園内を見終わって、門の方に向かう際の視界はこうなります。

通路の右側に売店のテントがあり、その向かいに人がたくさん座っているのが見えると思います。
あのあたりにはベンチが数脚あり、私が気付いた限りでは唯一、座って休憩できる場所です。(テント内のイートインスペースを除いては。)
私たちは、カラフルな葉っぱを眺めながらそこで持参のお弁当を食べましたよ。

このランチタイムを含めても、大浦荘での滞在時間は正味40分ほどでした。よっぽど何かのマニアという場合以外は、30分ほどの見学時間で十分かもしれませんね。
以上、「麻生大浦荘・紅葉特別公開」の訪問レポートをお送りしました!
おわりに
「伝右衛門の方がいい」とか「一度行けば満足」とかいろいろ言いましたが、なかなか行かれない場所ですし、こうして振り返ってみると、やっぱり行ってみて良かったと思います。
いままでおぼろげにしか知らなかった筑豊の炭鉱の歴史についても、見聞を深めるいい機会となりました。
欲を言えば、紅葉最盛期の様子を見てみたかったとは思いますが、こればっかりは天候にもよりますしね。
ただ、やはり雨の日ではなく、お日さまの出ている日に訪ねるのが断然おすすめです!
みなさんもぜひ炭鉱貴族たちも愛でたであろう庭園を楽しみに、また、当時の栄華を垣間見に、秋の飯塚に足を運んでみてはいかがでしょうか。
銘菓の本店に寄って帰るのもまた、訪問後のお楽しみとしていいかもしれませんよ☺
これにて当記事はおしまいです。最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。
それでは、よい一日を! Polly

※記事内の写真はすべて2019年11月29日のものです。